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成年後見制度の実態

2015.10.21

そもそも成年後見制度とは認知症、精神障害、知的障害などで本人の判断能力が不十分な場合、法定代理人が財産管理や老人ホーム等の施設への入所契約などをする制度です。判断能力の程度に応じて判断能力が「ほぼない」というもっとも重い『後見』から、『保佐』、比較的軽い『補助』の3種類があります。制度を利用する場合、親族らが家庭裁判所に申し立てますが、その際提出する医師の診断書や実際の本人の状態により家庭裁判所が判断します。
『後見』と判断された人には、成年後見人と呼ばれる法定代理人が就きます。成年後見人は本人に代わって預金を下ろせたり、本人が自分で行った契約行為を取り消すことができます。親族の他、司法書士や弁護士、社会福祉士など専門職が成年後見人などになります。

《制度の種類》

種類

後見

保佐

補助

本人の判断能力

ほぼない

著しく不十分

不十分

利用申請できる人

本人、配偶者、4親等以内の親族、検察官、市町村長など

後見人ら(成年後見人・保佐人・補助人の権限)

財産に関する法律行為の全般的な代理権、取消権

借入など一定の法律行為の同意見、取消権など

特定の法律行為の同意見、取消権など

 

 そこで最高裁判所が出している、成年後見関係事件の概況を見てみますと、平成26年中に成年後見人の申立ては34,373人、その内後見等と認められた人数が32,317人と94.9%となっており、ほとんど認められていることがわかります。その内、親族からの申立てが27,636人と80.4%です。そうなると成年後見人にもほとんど親族がなりそうですが、実態は11,937人36.9%とほとんど親族以外が成年後見人になっています。専門職で一番多いのは司法書士で8,716人、次に弁護士が6,961人となっており、子供の数より多いのが現状です。

《成年後見人等と本人の関係別件数》

 

 最近、新聞等で成年後見人らが本人のお金を使い込んだという記事が時々出ています。同じく最高裁判所の調べでは平成26年の被害総額は約57億円もあり、ほとんどが親族の不正ですので成年後見人になりにくくなっている実態があります。ただ弁護士らの不正も最近では目立ってきています。成年後見人には年1回、家庭裁判所に報告義務があり、もし調査して不正が発覚すると後見人は解任されたり、刑事罰に問われることもあります。

 また後見人に親族以外が就いた場合、報酬を張る必要があります。月2~3万円が多いようですが普通は、本人の財産から払いますが、その費用を出すことができずに申し立てをしない人も多いようです。

 実は介護保険を利用している方は約500万人を超えているのに対し、成年後見制度の利用者は約18万人しかいません。また認知症の高齢者だけでも推計で462万人いるといわれるので少なすぎるのが現状です。

ただもし申し立てが増えても、後見人になる専門職の人が少ないのも課題です。司法書士の数は約21,000人、弁護士は約35,000人と足しても56,000人しかいません。国や自治体は、一般の人が後見人になる『市民後見人』制度の普及を目指していますが、ただ自治体が開く講座を受講したり等認めてもらう為の手続きには手間がかかり、平成26年は213人しかなれず、なかなか増えません。もっと使いすい制度にしてもらいたいと思います。

そんな中、最近では財産の管理を特定の人に委託できる『家族信託』という制度が登場してきました。平成19年に信託法が改正されてできたこの制度でしたが最近注目されています。この制度を使えば、もし自分が認知症になった場合でも、家庭裁判所ではなく、自分が選んだ人に財産の管理を委託することができる制度ですので、興味のある方は一度ご相談ください。

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筆者紹介

伊瀬知 晃
福岡相続サポートセンター
代表取締役 会長

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