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配偶者が全て相続して本当にいいの?  ●2021年10月更新●

2017.09.20

本レポートは、2021年10月に内容を更新しています。

 

大ちゃん先生こと、高橋 大貴です。

 

相続税という制度はすべての国にあるわけではありません。相続税という制度がある国もあれば、ない国もあります。日本では、日露戦争の戦費をまかなうため 明治38年(1905年)に相続税は創設されました。今から100年以上前のことです。

 

同じ相続税がある国でも、相続税の計算のやり方は国によって全く異なります。日本は全世界でも例を見ない、とても特殊な相続税の計算をします。私もセミナーで毎回 説明をしていますが、何度 説明しても なんてわかりにくいのだと辟易するほど、複雑な計算式です。相続税を考えるにあたり、一般の方がこの計算式を丸暗記する必要はありません。しかし「基本」は理解しておく必要があります。この日本の相続税の「基本」を理解していないがゆえに、相続税を多く払ってしまうケースが後を絶たないからです。

 

【 日本の相続税の計算はややこしい 】

日本の相続税の計算は、とても複雑です。

例えば、「遺産がいくらあった」という情報だけでは、相続税を計算することはできません。同じく、「遺産をいくらもらった」という情報だけでも、計算することはできません。そう単純ではないのです。

例えば、亡くなった方の遺産が1億円とします。この1億円を1人が相続する場合と、2人が5000万円ずつ相続する場合とでは、相続税の金額が変わってきます。

同じく、5000万円の遺産を受け取ったとします。この5000万円が、遺産1億円のうちの5000万円だった場合と、遺産5000万円のすべてだった場合とでは、相続税の金額が変わってくるのです。

 

日本の相続税は、「遺産の相続」「法定相続人の数と続柄」「それぞれがいくらずつ相続するか」など、様々な情報を集めないと計算できない、複雑な制度であることをまず理解しましょう。「贈与税」のように、基礎控除を引いた金額を早見表に当てはめる・・・だけでは計算できない複雑な税金なのです。

 

【 ちょっと待って!! 配偶者がすべて相続していいの? 】

配偶者がすべて相続するというケースが、大変多くみられます。

配偶者の場合は、遺産分割や遺贈により実際に取得した正味の遺産額が、1億6千万円もしくは配偶者の法定相続分相当額までであれば、相続税はかかりません。これを「配偶者の相続税額の税額控除」といいますが、この制度を安易に利用しているケースが多いのです。

恐いのは「二次相続税」です。例えばお父さんが亡くなった場合に、お母さんがすべて財産を相続し、上記の制度を利用して相続税がゼロになったとします。しかし、状況によってはお母さんが亡くなった時の相続税(二次相続税)が大幅に上がってしまい、大変なことになるというケースが多々あります。お母さんが亡くなった時には、もう「配偶者の相続税の税額控除」は使うことができないためです。

 

 一次相続の際にこの「配偶者の相続税の税額控除」を安易に使うべきではないということを説明するため、下に「例」を一つ上げます。相続税がかかる資産をお持ちの方は、なぜこのような差がでるのか 相続税の基本を よくよく勉強しておくべきです。

 

【例】

 夫A 財産 6000万円  妻B 財産 4000万円

子2人 C・D とします

 

パターン①

夫Aが亡くなった際に、妻Bが6000万円すべて相続 = 一次相続税「ゼロ」

 ↓

妻の財産が4000万円+6000万円=1億円に

 ↓

妻Bが亡くなった際に、子C・Dが1億円を半分ずつ相続 = 二次相続税「770万円」

 ↓

一次相続税 ゼロ+二次相続税 770万円 =770万円」 (妻B 子C 子D の合計)

 

パターン②

夫Aが亡くなった際に、妻Bは相続しない

子C・Dが6000万円を半分ずつ相続 = 一次相続税 「120万円」

 ↓

妻の財産は4000万円のまま

 ↓

妻Bが亡くなった際に、子C・Dが4000万円を半分ずつ相続 = 二次相続税「ゼロ」

  ↓

一次相続税 120万円+二次相続税 ゼロ =120万円」 (妻B 子C 子D の合計)

 

【 引き継ぎ方で、相続税はこんなに違う! 】

 上記の例でいうと、同じ財産であるにもかかわらず、「お母さん経由で子に引き継いでいくか」「夫婦ともに子どもに引き継いでいくか」で、なんと「6倍以上」税金が違うことがわかります。こんなにも差が出るのです。日本の相続税の複雑さがお分かりになったでしょうか?

 

 今回のこのコラムを読んで不安になった方は、できるだけ早く「相続税の試算」を行ってみてください。上記はあくまで、ご家族4人で ご夫婦の財産が合計1億円だった場合の金額になります。それぞれの家庭の事情や家族の数、資産の状況によって全く試算結果が変わってきます。まずは「自身の状況の分析」から始められることが大切です。

また、もう一つ大事なのは「相続税に詳しい専門家」に相談をすることです。皆さまが気付いていないだけで、実は税理士以外の専門家も同時に必要となるケースが多くあります。当社では、お客様の状況に応じて相続に強い専門家(税理士・弁護士・司法書士等)でチームを組んで支援にあたっています。お必要な際は、いつでも当社にご相談ください。

 

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筆者紹介

高橋 大貴
福岡相続サポートセンター
相続コーディネーター

年間120件以上の相続相談をお受けしていますが、大多数の方が「税金」のことばかりを気にされています。そういう方は、相続対策を騙る営業マンから対策にならない商品を購入していたり、税務署には全く通用しないやり方を素人知識で行っていたりすることがほとんどです。相続対策は、まずは家族関係図や財産目録などを作成し、常に「全体を見渡しながら」行わなければ効果はありません。こんなはずではなかった…とならないためにも、地道に一つずつ一つずつ解決していきましょう。

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