大ちゃん先生こと、高橋 大貴です。
「借金をすると相続税が下がる」と思っている人が多くいます。これは大きな間違いです。借金をしただけでは相続税は1円も下がりません。
しかし、世の中の自称プロと呼ばれる人も、多くの方がこの「借金をすると相続税が下がる」という間違った説明をしているようです。
セミナーで私がこの話をすると、会場が大いにざわつきます。「あなたは何を言っているんだ。借金したら相続税は下がるはずだ!」と質問してくる方も毎回おられます。しかし、真実は一つしかありません。繰り返しますが、借金をしただけでは相続税は1円も下がりません。
あなたが相続税のかかる人だとして、1億円の借金をして船を買っても、相続税は下がりません。10億円の借金をして宝石を買っても、相続税は下がりません。
重要なのは、借金をして買う「モノ」が何かなのです。
【相続税を下げているのは借金ではない】
不動産は、相続税の計算をする際に、売り買いの金額を使わないというルールがあります。基本は、船や宝石と同じく、すべての財産は「時価」で評価します。しかし、不動産に関しては国税庁が発表する「路線価」や市町村が発表する「固定資産税評価額」などの指標を使ってよいということになっています。
この指標の金額は、一般的に実際の売り買いの金額よりも低いため、不動産を売り買いの金額で計算した相続税よりは、指標の金額で計算した相続税が低くなります。
そう、相続税を下げているのは借金ではなく、「不動産」なのです。
そして、不動産は大きな買い物なので、借金することが多い というだけです。現金で買っても借金で買っても、その不動産の金額が同じであれば、相続税の下がり方は同じです。
借金して 株を買っても 相続税は下がりません。
借金して 宝石を買っても 相続税は下がりません。
借金して 不動産を買うと 相続税は下がります。
現金で 不動産を買っても 相続税は下がります。
借金が1億円だろうが10億円だろうが100億円だろうが、同じことです。
【ここを間違うと、多くの判断を間違う】
「借金をすると相続税が下がる」という間違いしたままだと、人生において多くの判断を誤ってしまいます。
(1)現金でも買えるモノを、「借金で買ったほうが相続税は下がる」と勘違いし、わざわざ高金利で借りて買ってしまう。
(2)現金でも支払えた修繕工事を、「借金で支払ったほうが相続税は下がる」と勘違いし、わざわざ高金利で借りて支払ってしまう。
(3)繰り上げ返済できる十分な現金があるのに、「借金があるほうが相続税は下がる」と勘違いし、繰り上げ返済をせず、金利を支払ってしまう。
上記(1)~(3)の失敗例は、数多くあります。皆さま、お心当たりはありませんでしょうか?
【そして相続税の節税だけを考えないこと】
「借金して賃貸アパートを建てると相続税が下がる」という言葉は、真実です。借金ではなく、手に入れた「賃貸アパート」が相続税を下げます。しかし、相続税の申告が終わった後も、賃貸アパート経営はずっと続きます。
相続税を下げるためだけではなく、賃貸アパート経営が末永く大丈夫かということも、必ず合わせて考えておきましょう。その二つをよく考えておかなければ、相続税が下がったのは良いが、結局 次の世代が「借金地獄」で延々と困ることになります。
借金は、自分の身の丈よりも大きな買い物をする際に、その収益で返済が十分可能であること、もしくは 借金以上の価値が見込めること を予測・計画し行うものです。くれぐれも注意をしてください。